2020 𝄆 Wardian case 𝄇 by Watanabe Shinjiro × Kouichi Hashiguchi

2020 𝄆 Wardian case 𝄇 by Watanabe Shinjiro × Kouichi Hashiguchi

この度GRIDIN’ではコウイチハシグチと渡邊慎二郎の二人展『2020 𝄆 Wardian case 𝄇』を企画・運営を致しました。

コウイチハシグチは都内のクラブなどを中心に草花のインスタレーションを展開するフラワーアーティストです。本展では会場自体を一つのテラリウムとし、さらにその中に観賞用のテラリウムを制作、この二つのテラリウムを原宿近くの会場に溜まる雨水を利用し生育させます。入れ子状に展開されたテラリウムに鑑賞者を設定することは、ホワイトキューブ、引いては会場の建築そのものへのメタなアプローチであると共に、都市の中で我々が自覚できないまま循環していく水という自然を再発見させます。
渡邊慎二郎は植物と人間の関係性を主題に作品を発表してきた作家であり、近作では特に都市の中に生きる植物がモチーフになっています。本展では植物の運搬をテーマに作品を複数発表します。渡邊は、都市の中で植物に対しモビリティを与えることを契機にあらゆる価値の転覆を起こし、我々と植物の関係を既存の二項対立とは別の形で表現しようと試みます。
タイトルの『2020 𝄆 Wardian case 𝄇』は本展開催年の西暦と、『Wardian case(ウォードの箱)』、繰り返しを表す反復記号が並んでいます。『ウォードの箱』はイギリス人医師ナサニエル・バグショー・ウォードが1829年頃に発明した植物栽培用のガラス容器です。当時のイギリスは大気汚染の影響で植物が生育しにくい環境でしたが、ウォードは偶然にガラスのボトルの中にあるシダが少量の肥料で発芽・成長する事を発見し、この箱を発明しました。また、ウォードはこの発明を公表したときすでに、箱の内部において植物が動物の生存を助けることを示唆しており、その数年後にはガラス箱のなかで魚を飼育し、水生植物を植えると水を入れ換えなくとも魚が繁殖することを証明しました。この小型温室を改良した動物飼育器こそ、現在も親しまれているビバリウムの第1号なのです。さらに興味深いのは、当初このウォードの箱が植物の運搬のために広く普及した点です。当時の海外輸送は長い船旅に限定されており、潮風や水不足の中で植民地の珍しい草花を本国に生体で持ち帰る事は非常に困難でしたが、この発明によってそれが可能となりました。つまり、植物にモビリティを付与させるために、外界からガラス板などによって隔離させることで現在のテラリウムの原型は誕生しました。この発明は当時貴族趣味であった植物鑑賞を民主化し、植物と人間が関わる歴史の上での大きなパラダイムシフトを起こしました。
本展では、渡邊の運搬した植物たちがハシグチのテラリウムの中で生体として展示されます。これは2020年現在の都心で行う『ウォードの箱』の再発明、および実践です。本展は、比喩的な意味においても、プラクティカルな意味においても、様々なレイヤーの上で二人の作家・作品が互いの生存を助け合い共生するリレーショナルな展覧会であり、ビバリウムでもあるのです。

渡邊 慎二郎 / Shinjiro WATANABE
1995年愛知県生まれ。
2020年東京藝術大学大学院博士課程在籍。
人間本位の考え方から生き物としての精神性を獲得することを目的にしている。
人間の中にある植物性を引き出し、生き物になることを志向している。

コウイチハシグチ
2015年より東京を拠点に活動を開始。
2016年よりLOYALTY FLOWERS名義で花自身をを新たな解釈とともに、
見つめ直すプロジェクトを始動。数々のアーティストとコラボレーションし、フラワーディレクションを行なっている。
物心ついた時から花に囲まれた環境で育ち、そこで感じた花一つ一つの美しさの本質を追求。
ストリートカルチャーからインスパイアされた花は、
日本の生け花の感性をちながらもエネルギッシュでエッジの効いた作品である。
自身もパフォーマーとしての表現方法の探求に挑んでいる。
広告を始めコスメビジュアルでのフラワーディレクション。
多数のマガジン等でもアートディレクションを行い、自身のバックボーンでもあるストリートカルチャー、
音楽との融和性も高く、クラブイベント等のアンダーグラウンドシーンでの装飾にも定評がある。
花を媒体として日常に潜むインスピレーションから本質的エネルギーを昇華させることをライフワークとしている。
インスタレーションとしては
“NEO TOKYO×YUKI NAKAJO”(District 24)(2017) “Flower Trip”(2017-2018)
“茶酔 ”(2019)などがある

ARCHI HATCH代表 徳永雄太氏に空間スキャニング動画を撮影して頂きました。
いつでもどこでも本展示をご覧いただくことができます。こちらからご覧ください。

企画・運営:越彩果(GRIDIN’) / 原田ふくみ(GRIDIN’)
キュレーション:石毛健太
デザイン:太田明日香
空間設計:横尾周
空間スキャニング:徳永雄太(ARCHI HATCH)
写真撮影:竹久直樹